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Q1
「ご本尊を奉安し」といいますが、その「ご本尊」とはなんでしょうか。
A1
日蓮宗の私たちが、信仰し、礼拝し、帰依する根本の対象です。
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Q2
「ご本尊」という言葉の意味は。
A2
「本尊」という漢字で表す文字の意味は、いろいろあります。
・もともと(本来)尊い仏さま(本来尊重)
・根本として尊敬し、崇拝する仏さま(根本尊崇)
・すべてのものが本来もっている尊い姿(本有尊形)
これらを要約すれば「本尊」という二文字になるわけです。
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Q3
具体的にはなにを指すのでしょうか。
A3
日蓮宗では日蓮聖人が、世界で初めて紙の上に書きあらわされた「大曼荼羅」を指します。このことを「日蓮がたましひ(魂)を墨に染めながしてかきてそうろうぞ」(経王殿御返事)とお述べになっています。
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Q4
いつ、日蓮聖人は「おまんだら」をお示しになられたのでしょうか。
A4
それは、文永十年(1271)7月8日、佐渡に配流されたいた間のことです。それまで誰も顕さなかった「ご本尊」を「大曼荼羅」の形で、「法華弘通(お題目総弘通 のはたじるし)」(日女御前御返事)をして、弟子・壇信徒に与えられたのです。それは、お釈迦さまがご入滅されて、後二千二百二十余年(末法)を過ぎて、未だかつてなかったこと、初めてのこと(正像未弘鵜・未曾有)とされています。
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Q5
「お曼荼羅」には文字がたくさん並んでいますが、何が書かれているのでしょうか。
A5
全体は、仏さまのさとりの世界が書き示されています。すなわち遠い昔(過去)からいままで(現在の世)また遥かな未来に向かってやすみなく法華経が釈尊(久遠実成の本仏)が我等衆生に対して説き続けておられる法華経説法の姿であり、私たちはこの久遠の本仏の功徳の結晶(法華経)を受けつづけているという法華経の浄土=「霊山浄土」があらわされているのです。
具体的には、まず中央(中心)に「南無妙法蓮華経」と日蓮聖人の独特の書体で大書されています。向かってその左脇に「釈迦牟尼仏」、右脇に「多宝如来」、また多宝如来の右脇には「上行」・「無辺行」菩薩、釈迦牟尼仏の左側には「浄行」・「安立行」菩薩の四大菩薩、四方(四隅)には「四天王」、その他、法華経を聞いている仏さま、菩薩たちの名前が書かれています。
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Q6
「久遠実成の本仏」とはどういう意味ですか。
A6
久しく遠い昔から我等衆生を教化し続けてこられた大恩教主の仏さまという事です。法華経の如来寿量品第十六に「然るに我れ実に成仏してより己来久遠(このかたくおん)なること斯の如し」とあるところから、この言葉が出ています。如来寿量品ではじめて釈尊の「大慈悲」が説きしめされました。
生身の釈尊(歴史上のお釈迦さま)の本当の姿は、数えることもできない遠い過去(五百億塵点劫 )の世において成仏し、それからずっと限りない時間、人々を教化救済し続け、未来永劫に法華経を説き続け、いのちの尽きることのない、御本仏であるということです。
この御本仏は、あらゆる仏さまの源となっている仏さまという意味でもあります。現在、日本では各宗派によってさまざまな仏さまが、ご本尊としあがめられています。しかしお釈迦さまがお説きになった多くの経典の中に登場する仏たちであり、この地球上には姿を現したことのない仏なのです。この地球に姿を現し、法=永遠の真理を説かれたのはお釈迦さま以外に実在しないのです。
法華経には数えきれないほどの過去・現在・未来(三世)の仏さまたち、地球からみて四方(東・西・南・北)、八方(四方に東北・東南・西北・西南)、十方(八方に上・下=宇宙全体)においでになる仏さまたち、なんと千万億の仏さまの存在が説かれています。
これらの仏さまは久遠の本仏に対して、分身仏という地位を与えられています。中心に根本仏の久遠の本仏がおられ、分身仏も配置され、大曼荼羅御本尊=法華経の世界が成り立っているわけなのです。
久遠の本仏は、私たちが住んでいるこの世界(娑婆国土)に常住され、衆生の教化、救済に当たって下さっている、この上もない有り難い仏さまなのです。久遠以来、私たちもみな本来もっている仏の姿をあらわすために、この本仏の「仏子」として大きな慈悲につつまれて本仏と共に生き続け、自分も仏の子であるとの自覚に目覚め、その喜びを感じ、人々に伝えていかなければなりません。
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Q7
中央の「南無妙法蓮華経」のお題目から、「ひげ」のようなものが左右にのびていますが・・・?
A7
確かに中央の「お題目」の七字のうち、「法」の一字を除いて、他の六字は左右に長くのびています。不思議な現し方をされていますね。これは、日蓮聖人が「妙法五字の光明に照らされて本有の尊形となる」(日女御前御返事)とお説きになわれたことから「光明点の筆法」と言います。「お題目」の光明が全てのもの(地獄界までも)をつつみ込まれている尊い姿を示されているのです。
「大曼荼羅」に書かれた仏さまや、菩薩たち、その他あらゆるものが、この仏さまのさとりの光明に照らされて「本有の尊形=全てのものが本来もっている尊い姿」となったところを、あらわしているのです。
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Q8
「おまんだら」の左右にある不思議な文字はなんですか。
A8
向かって右が不動明王、左が愛染明王を示す種字(梵字)です。
聖人は「不動、愛染は南北の二方に陣をとり」と説明されています。「大曼荼羅」は上が東、下は西、右が南、左が北を表します。左右は南北の二方ですから、ここに不動(南=右)愛染(北=左)に二明王が陣取っている形を表しているのです。
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Q9
なぜ、不動・愛染だけを「梵字」で書かれたのでしょうか。
A9
聖人ご自身はその理由をはっきりとお説きになられておりませんので、ご真意がどこにあられたのか推測するしかありません。
聖人は、建長六年六月二十五日に生身の愛染明王と不動明王のお姿を感得され、絵に描いて残されております。このような宗教体験から、特に不動・愛染の二明王については、「梵字」で書きあらわされたものと思います。
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Q10
お寺の本堂におまいりすると、ご本尊は仏像でおまつりしてありますが。
A10
お寺の本堂におまつりしてあるのは、「大曼荼羅御本尊」を目で見てすぐわかるように仏さまのお姿にあらわしたものです。文字で仏像と形に異なりはありますが、あらわそうとしているところは全く同じですから、両者の間に違いはありません。
いずれにしてもご本尊をおまつりしてあるところは「仏さまのさとりの世界=霊山浄土」をそこに再現した信心に励む道場なのです。
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Q11
しかし、お寺によって色々まつり方があって違っているように思えますが。
A11
たしかにその通りです。お寺の本堂には大曼荼羅御本尊がご本尊として基本的に奉安されています。仏像の形式としては大きく分けて次の三つになります。
(1)お題目の宝塔を中心にして、代表的は仏さまや菩薩たちを集めた十界勧請形式。
(2)お題目の法塔とその両脇に釈迦牟尼仏、多宝如来の二仏が並んで座り、さらに上行・無辺行・浄行・安立行の四人の菩薩を配した一塔両尊四士形式。
(3)お釈迦さまを中心に四人の菩薩を配した一尊四士形式。
などがあります。
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Q12
「おまんだら」にはあらゆるものがあらわされているということでしたが、どういう意味でしょうか。
A12
この「大曼荼羅」には、十の世界=十界があらわされているからです。
上は仏界・菩薩界から、縁覚・声聞・天・人界、下は地獄・餓鬼・畜生・修羅界といった世界のものまで、あらゆる「いのち」あるものが「成仏」した姿をあらわしているのです。したがって、皆さんにもお仏壇におまつりするご本尊としての大曼荼羅は、十界がきちんとあらわされている(このことを「勧請」といいます)大曼荼羅を奉安して下さい。
(中央に「南無妙法蓮華経」のお題目が書写されているからといって、日蓮宗以外の教団のご本尊、お曼荼羅などはおまつりしてはいけません。)
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Q13
日蓮聖人はたくさんの「おまんだら」を残されていますが、どれがよいのでしょうか。
A13
日蓮宗では、特定のご本尊だけを定めて、他のものは全て否定するという立場はとっておりません。
たくさんある日蓮聖人の「大曼荼羅御本尊」の中から、皆さんのお仏壇におまつりしていただくのに最もふさわしいご本尊として、鎌倉比企ヶ谷・妙本時に奉安されています「弘安三年三月の大曼荼羅=臨滅度時の御本尊」を推薦しています。
日蓮宗ではこのご本尊を謹写して皆さんにお届けしていますので、菩提寺を通してお申込み下さい。そして必ず菩提寺のご住職に大曼荼羅の開眼供養をお願いして下さい。その際、必ず大曼荼羅の裏面に、いつ、誰にこのご本尊を授与されたかなどの授与書きをして頂いて下さい。
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Q14
仏壇を購入しましたが、そのとき仏具店でお曼荼羅も付けてくれました。それではいけないのでしょうか。
A14
仏具店で用意してくれる「御曼荼羅本尊」はそのほとんどが日蓮聖人の御真蹟を謹写したご本尊ではありません。日蓮宗で推薦するご本尊が、菩提寺のご住職が書写されたご本尊をおまつりして下さい。仏具店のものは、聖人の花押(署名)が誤っていたり、誰が書写したかも明らかでありませんから、好ましくありません。
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Q15
ご本尊は、だれにでも授与して頂けるのでしょうか。
A15
ご本尊は日蓮宗徒として大切な信仰の対象ですから、簡単に誰にでもというわけにはまいりません。日蓮聖人も、信仰に迷う人、確固とした信仰心のない人には、例え恩人であっても授与されておりません。ですから、授与して頂きたいと願うあなたが、確固とした日蓮宗の信仰の姿を現した上でないと授与されません。
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Q16
ご本尊を授与されるとき、なにか式のようなものはあるのでしょうか。
A16
一例をあげます。以下のような誓紙を取り交わし、御本堂の御宝前において「誓」をして授与するお寺があります。
「誓」として「このたび御本尊を拝受しました上は、○○山○○寺檀信徒として仏祖三宝に専心給仕し日蓮宗の信心を道念堅固に勧めることを誓います」とあります。そして、年月日、住所、氏名を自署して押印し、檀信徒としての決意の表明をして頂くということです。詳しくは菩提寺にお尋ね下さい。
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